宿泊施設の口コミ返信は、口コミを書いた人だけが読むものではありません。
これから予約しようか迷っている人も、口コミと一緒に返信を見ています。
そのため、返信の内容によっては、口コミそのものよりも宿の印象を左右することがあります。
良い口コミへの返信が毎回同じ定型文になっている。
悪い口コミに対して、少し強い言い方で返してしまっている。
謝りすぎて、かえって宿側が全面的に悪いように見えている。
こうした返信は、悪気がなくても次のお客様には不安材料として見えることがあります。
この記事では、宿泊施設の口コミ返信で避けたいNG対応と、実際にどう直せばよいかを整理します。
口コミ返信は、次のお客様にも見られている
口コミ返信でまず意識したいのは、返信相手は口コミを書いた本人だけではないということです。
もちろん、口コミを書いてくれた方へ誠実に返すことは大切です。
ただ、それと同時に、返信はこれから宿を選ぶ人への案内にもなっています。
たとえば悪い口コミに対して、次のように返していたとします。
その点については事前にご案内しておりました。
他のお客様からはそのようなご意見はいただいておりません。
宿側としては事実を伝えているだけかもしれません。
でも、これを予約前の人が読むと、少し冷たく見えることがあります。
「何かあったときに、こちらが悪いと言われそう」
「問い合わせしにくそう」
「宿側がかなり強そう」
そんな印象を持たれる可能性があります。
口コミ返信では、「宿側の正しさ」だけでなく、「未来のお客様にどう読まれるか」まで頭を回す必要があります。
目の前の一件に返信しているだけなのに、まるで世界中の人に見守られながら接客させられているような、独特のプレッシャーがありますよね。「なんでこっちがここまで気を遣わなきゃいけないんだ」と面倒に思うのは当然です。 公開される文章を扱うというのは、それだけで神経を削る作業なのですから。
だからこそ、型を覚えて、できるだけ心を消耗させずに切り抜ける防衛策が必要です。
宿泊施設の口コミ返信でやってはいけないこと
ここからは、宿泊施設の口コミ返信で避けたい対応を整理します。
1. 感情的に反論する
悪い口コミに対して、宿側にも言いたいことがある場合は多いです。
事前に説明していた。
案内を読んでいなかった。
実際の内容と少し違う。
こちらだけが悪いわけではない。
そう感じることはあります。
ただ、その気持ちをそのまま返信に出すと、読んだ人には反論の強い宿に見えてしまいます。
NG例:
その点については事前にご案内しておりました。
ご確認いただけていなかったようで残念です。
この書き方だと、宿側の言い分は伝わります。
ただ、お客様を責めているようにも読めます。
修正版:
このたびはご不便をおかけし、申し訳ございません。
事前にご案内していた内容ではございましたが、初めてお越しのお客様にも分かりやすく伝わるよう、案内文の見直しを行ってまいります。
ポイントは、相手を責めないことです。
事前案内をしていた事実は残しつつ、「伝わり方を見直す」という形にすると、角が立ちにくくなります。
2. 事実と違うことまで認める
悪い口コミに返信するとき、低姿勢になりすぎて、事実と違うことまで認めてしまう場合があります。
これは避けた方がよいです。
口コミ欄は公開されています。
一度書いた返信は、次のお客様にも読まれます。
実際には違う内容まで認めると、その後も同じ印象で見られる可能性があります。
NG例:
清掃が行き届いておらず、大変申し訳ございませんでした。
今後このようなことがないよう、徹底してまいります。
もちろん、本当に清掃不備があったならこの方向で問題ありません。
ただ、内容を確認した結果、明確な清掃不備とは言い切れない場合は、少し表現を変えた方が安全です。
修正版:
このたびはお部屋の状態についてご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません。
いただいたご意見を受け、清掃後の確認をより丁寧に行ってまいります。
「清掃が行き届いていなかった」と断定せず、「お部屋の状態について不快に感じさせた」と受け止める形にしています。
謝ることと、すべてを認めることは同じではありません。
3. 実際にはできない改善を約束する
悪い口コミへの返信でよくあるのが、「改善します」と書きすぎることです。
もちろん、改善できることなら書いて構いません。
清掃の確認を増やす。
案内文を見直す。
駐車場の表示を分かりやすくする。
チェックイン手順を整理する。
こうしたものは、実際に対応しやすい改善です。
一方で、すぐには変えられないものもあります。
- 道路沿いで車の音がする
- 建物が古い
- 周辺に飲食店が少ない
- 駅や観光地から距離がある
- 部屋の広さや構造に限界がある
こうした内容に対して、ただ「改善します」と書くと、次に同じ口コミが来たときに苦しくなります。
NG例:
周辺環境については、今後改善してまいります。
周辺環境は、宿だけで変えられるものではありません。
この場合は、改善ではなく、事前案内の見直しに寄せた方が自然です。
修正版:
周辺環境そのものをすぐに変えることは難しい面もございますが、事前に状況が伝わるよう、案内内容を見直してまいります。
できないことを約束するより、できる範囲をはっきり書く方が信頼されます。
4. すべてを宿側の落ち度として謝る
悪い口コミを見ると、とにかく謝った方がよいと感じることがあります。
ただ、すべてを宿側の落ち度として謝る必要はありません。
特に小規模宿泊施設では、建物の古さ、立地、周辺環境、運営時間など、施設の特性として説明した方がよいこともあります。
NG例:
ご期待に沿えず、大変申し訳ございませんでした。
すべて改善できるよう努めてまいります。
この書き方だと、何が問題だったのか、何を改善するのかが分かりません。
しかも「すべて改善」と書いてしまうと、実際には対応できない内容まで含まれてしまいます。
修正版:
ご期待に沿えない点があり、申し訳ございません。
施設の構造上、すぐに対応が難しい部分もございますが、事前のご案内で分かりやすくお伝えできるよう見直してまいります。
「申し訳ない」と「すぐには変えられない」を分けて書いています。
理不尽な内容に対して、宿側がすべてを飲み込んで平謝りする必要はありません。
ただ、だからといって、こちらの割り切れない感情をそのまま口コミ欄に吐き出してしまうのも、未来の予約を逃すリスクになります。
口コミ欄は、お客様のサンドバッグでもなければ、宿側の鬱憤を晴らす場所でもないからです。
すべてを丸呑みにして傷つく必要はありません。感情と事実を切り分けて、「言えないことは言えない」と品良く、冷徹に境界線を引くのが大人の接客です。
5. 良い口コミにも毎回同じ定型文で返す
悪い口コミだけでなく、良い口コミへの返信にも注意が必要です。
良い口コミは嬉しいものです。
ただ、毎回同じ返信をしていると、少し機械的に見えます。
NG例:
このたびはご宿泊いただき、誠にありがとうございました。
またのお越しを心よりお待ちしております。
悪い文ではありません。
でも、どの口コミにもこれだけだと、口コミを読んで返している感じが薄くなります。
修正版:
このたびはご宿泊いただき、ありがとうございました。
お部屋で気持ちよくお過ごしいただけたとのこと、大変嬉しく拝見しました。
またお近くへお越しの際は、ぜひお立ち寄りください。
口コミの内容に合わせて、一文だけ足しています。
「清掃を褒められた」なら清掃について。
「スタッフ対応を褒められた」なら対応について。
「静かに過ごせた」なら滞在時間について。
少しだけ具体的にするだけで、定型文感はかなり減ります。
良い口コミへの返信例文は、こちらでも詳しく整理しています。
良い口コミへの返信例文|宿泊施設が毎回同じ返信にしないための書き方
6. 「ご指摘ありがとうございます」だけで終わる
悪い口コミに対して、
ご指摘ありがとうございます。
今後の参考にさせていただきます。
と返すことがあります。
これも悪くはありません。
ただ、内容によっては少し冷たく見えます。
特に、お客様が不快な思いをしたと書いている場合、「ご指摘ありがとうございます」だけでは受け止めが弱く見えることがあります。
NG例:
ご指摘ありがとうございます。
今後の参考にさせていただきます。
修正版:
このたびはご不便をおかけし、申し訳ございません。
いただいたご意見を受け、初めてお越しのお客様にも分かりやすくご案内できるよう見直してまいります。
「参考にします」よりも、何を見直すのかを少し書いた方が伝わります。
7. お客様を責めるように見える表現を使う
宿側としては普通に説明しているつもりでも、読む人には責めているように見える表現があります。
たとえば、次のような言い方です。
- ご確認いただけていなかったようです
- ご理解いただけず残念です
- 通常は問題なくご利用いただいております
- 他のお客様からはそのような声はありません
- 案内に記載していた通りです
どれも事実を含んでいるかもしれません。
ただ、口コミ返信では強く見えやすい表現です。
言い換えるなら、次のようにします。
NG寄り:
案内に記載していた通りです。
修正版:
事前のご案内が十分に伝わっておらず、ご不便をおかけいたしました。
NG寄り:
他のお客様からはそのようなご意見はありません。
修正版:
いただいたご意見を受け、今後のご案内や運営の参考にしてまいります。
宿側の言い分が100%正しいときほど、つい強い言葉で白黒つけたくなりますよね。
でも、口コミ欄の中でお客様と戦って、勝ち負けを決める必要はありません。
文字の上での論破に大勝利して、宿のプライドを守れたとしても、それを読んだ未来のお客様が「この宿、正論で殴ってきて怖いな…」と引いてしまい、予約が減ってしまったら意味がないからです。それはあまりにも「虚無」です。
私たちが本当に戦うべき相手は目の前のクレーマーではなく、「未来の売上を失うリスク」です。
悪い口コミへの返信で特に注意したいこと
悪い口コミへの返信では、次の3つを分けて考えると書きやすくなります。
- 不快に感じさせたことへの受け止め
- 宿側として説明できる事実
- 今後できる範囲の対応
たとえば、道路の音について書かれた場合です。
口コミ例:
道路沿いで車の音が気になり、あまり眠れませんでした。
宿側として言いたいこと:
- 不快に感じさせたことは受け止めたい
- ただ、道路沿いなので音を完全になくすことは難しい
- 事前に分かるように案内を見直したい
返信例文:
このたびはご宿泊いただき、ありがとうございました。
車の音により十分にお休みいただけなかったとのこと、ご不便をおかけいたしました。立地上、時間帯によっては道路の音が聞こえる場合がございます。
今後は、事前のご案内や表記の分かりやすさについて見直してまいります。
このように書くと、謝る部分と説明する部分を分けられます。
悪い口コミへの返信例文は、こちらの記事でもケース別に整理しています。
悪い口コミへの返信例文|宿泊施設が感情的に返さないための書き方
良い口コミへの返信でも、定型文になりすぎない
良い口コミへの返信は、悪い口コミより気楽に見えます。
でも実際には、毎回同じような文章になりやすいです。
ありがとうございました。
またのお越しをお待ちしております。
この形に逃げたくなる気持ちは分かります。
楽です。すごく楽。脳が節電モードに入ります。
ただ、良い口コミは宿の良さを伝える機会でもあります。
たとえば、清掃を褒められたなら、
清掃についてお言葉をいただき、大変嬉しく思います。
スタッフ対応を褒められたなら、
安心してお過ごしいただけたとのこと、嬉しく拝見しました。
地域の雰囲気を褒められたなら、
宿だけでなく、周辺の雰囲気も楽しんでいただけたようで何よりです。
このように、口コミの内容に合わせて一文だけ足す。
それだけで、返信がその口コミに向けたものになります。
返信を書く前に、宿側の言いたいことを分ける
口コミ返信で失敗しやすいのは、最初からきれいな文章を書こうとすることです。
特に悪い口コミでは、感情と事実と謝罪が混ざります。
まずは、返信文にする前に、宿側が言いたいことを分けます。
たとえば、次のように書き出します。
- 不快にさせたことは申し訳ない
- ただ、道路沿いなので車の音は完全にはなくせない
- 予約ページの案内が分かりにくかったかもしれない
- 次から事前案内を見直したい
この段階では、文章が荒くても構いません。
大事なのは、何を謝るのか、何を説明するのか、何を約束できるのかを分けることです。
ここを分けずに書くと、感情的な反論になったり、逆に全部を認めるような文章になったりします。
公開する前に一度整える
口コミ返信は、書いた直後にそのまま投稿しない方が安全です。
特に悪い口コミへの返信は、一度読み返した方がいいです。
公開前に見るポイントは、次の5つです。
- 相手を責める言い方になっていないか
- 事実と違うことまで認めていないか
- 実際にはできない改善を約束していないか
- 謝罪だけで終わっていないか
- 次のお客様が読んだときに不安にならないか
この5つを見て、大きく外れていなければ十分です。
完璧な返信を書こうとしなくて構いません。
むしろ、完璧にしようとすると、また定型文に戻ります。人間、すぐ安全地帯に逃げるので。
口コミ返信に迷ったら、一度「ペイトー」に置く
口コミへの返信は、頭では分かっていても、いざ書こうとすると難しいものです。
良い口コミには、いつも同じ「ありがとうございます」になってしまう。
悪い口コミには、言いたいことがあるのに、そのまま書くと強くなりすぎる。
毎日の現場を回しながら、一件ずつちょうどよい言葉を選ぶのは、思っているより負担があります。
「ペイトー」は、そんなときに使える小さな下書き場です。
実際の口コミと、宿側が返信で言いたいことを入れると、口コミ欄に載せやすい文面に整えます。
きれいごとに寄せすぎず、かといって角が立ちすぎないように。宿側の言いたいことを残しながら、読まれて困らない言葉に直していきます。
返信案は、「掲載用」「人間味あり」「短め」の3つ。
そのまま使っても、少し手直ししても構いません。
感情のまま返してしまう前に。
あるいは、いつもの定型文で済ませてしまう前に。
一度、ペイトーに言いたいことを置いて、返信文を整えてみてください。
まとめ
宿泊施設の口コミ返信で避けたいのは、感情的な反論と、何でも認めてしまう過剰な謝罪です。
悪い口コミへの返信では、不快に感じさせた点を受け止めつつ、宿側として説明できる事実と、今後できる範囲の対応を分けて書くことが大切です。
良い口コミへの返信では、毎回同じ定型文で終わらせず、口コミの内容に合わせて一文だけ足すと、宿の温度が伝わりやすくなります。
口コミ返信は、上手な文章を書くことよりも、読まれ方を考えることが大切です。
宿側の言いたいことを消しすぎず、でもそのまま出しすぎない。
その間のちょうどよい言葉に整えることが、口コミ返信では一番大事です。